きみのひだまりになりたい
医者には、精神的なものだろうと診断された。当然秋祭りには行けるわけもなく、お母さんが結月ちゃんの家に連絡したのをあとから聞いた。高熱が引いてきたのは、3日ほど経ったころだった。
学校は休んだ。完治していないし、それに、行きたくなかった。合わせる顔がない。気軽にうそもつけなくなった状態で、何を、どう、伝えればいいんだろう。
いまだに恥ずかしくて、怖くて、苦しくなる。傷と一体化した感情は、否応なしにわたしを攻撃してくる。この症状に陥ってもなお、ときおりうそを吐いて、息を止めかけていた。
早く、大丈夫になりたかった。
――ピンポーン。
「まひる、結月ちゃんがお見舞いに来てくれたわよ」
扉を開けなかった。しばらくするとお母さんはあきらめ、玄関にいる結月ちゃんにやんわりとお断りを告げる。きれいなソプラノがうっすらと聞こえてきて、胸を締めつけられた。
家を出て行く結月ちゃんを、自室の窓から覗き見た。不意に結月ちゃんがこちらを見上げ、とっさにしゃがんで隠れる。
もう一度おずおずと外を眺めると、そこにはすでに、小柄な姿はなくなっていた。安心したような、がっかりしたような、相容れない気持ちに押しつぶされそうだった。
次の日も、その次の日も、結月ちゃんはわたしに会いに来た。文化祭を今週末にひかえ、委員として大忙しだろうに、毎日欠かさずわたしにチャンスをくれる。
そのたびにわたしは拒絶し、追い返した。安心安全な領域をはみ出すことに臆していた。