きみのひだまりになりたい


とっくに結月ちゃんは前を向いていた。サイテーなわたしのこと、わからなくて怖いだろうに、味方で在ろうとしてくれている。



わたしも。

結月ちゃん、わたしもね、思ってる。


ひとりきりで食べるごはんは、おいしいけど味気ない。帰り道もつまらなかったし、ここまで響いた花火はきれいなだけ。


わたし独りじゃ、どこにいても、何をしていても、あったかくなかった。



一緒だから、好きになれた。




「わ、わたし……っ!」



――『うそつき』




ドックン、と左胸がしびれた。咽頭が固くしぼられていく。言葉を吐き出せない。たちのわるい熱が、心の大事なところを燃やしていく。

やばい。だめだ。本音を押し殺して、うそがこぼれてしまう。わたしが届けたいのはそれじゃない。ちがう、のに。



助けて。



――『本当にきらいだったら、』



毛布をはぎ取った。闇を脱し、ベッドの横に設置してある棚へ、一心不乱にうでを伸ばす。

棚の上に放置し続けていた、紙パックのオレンジジュース。うそがのどを這い上がるより先に、トゲを引っこ抜くようにストローを取り出した。


ぬるいのか冷たいのか、あいまいな酸っぱさ。するりと拘束を解き、体内に溶けていく。苦しさを甘やかな風味にやわらげ、鼻から抜けていった。




「……ふ、っ、おいし……」




やさしい味がした。大好きだった。うそじゃない。

わたしの言葉だ。わたしの、思いだ。


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