きみのひだまりになりたい
「――結月ちゃん」
「……! ま、まひる、ちゃ……?」
結月ちゃんもむせび泣いていた。信じられなさそうにまばたきをして、皮のめくれた唇を引き結ぶ。小さな顔はやつれ、白い肌は傷んでいた。
痛い痛いと傷口が金切り声を上げる。今すぐに逃げ出したい衝動をこらえ、素足で踏んばった。ひそかに握りこぶしをつくる。
やな思いも取りこぼさない。結月ちゃんと真っ直ぐに向き合いたい。
言わないと。大丈夫。今なら言える。
髪を短くしたかったんだ。紺色の浴衣はわたしには着こせないと思う。着付け教室の案も取り入れようとしてくれたね。結月ちゃんの恋愛観、すごくすてきだと思ったよ。毎日会いに来てくれてうれしかった。文化祭は一緒に回りたい。
うまくまとめられないから、これだけはいちばんに言わせて。
「結月ちゃん……ごめんね。ありがとう。大好きだよ!」
「……っ、あたしも、ごめ……。会いたかった……!」
破顔してうでを広げるわたしに、結月ちゃんは鼻水をたらしながら抱きついた。わんわん泣いて、お互いの肩をびしょぬれにした。近くにいたお母さんも、もらい泣きをしていた。
ぎゅうっと背中にしがみつく結月ちゃんを、倍以上の強さで抱きしめ返した。怖かったよね。心細かったよね。ようやく安らげる。わたしたちは、独りじゃない。
日影も日なたもあるこの世界で
わたしはわたしらしく生きる。
今、そう決めた。