きみのひだまりになりたい


◇◇



結んだ手に、重なる陽の目。
凪いだ青を、包んでいく橙色の透明感。

うそつきだったあのときは、つかみそこねてしまったものたち。


思っているよりも、世界はやさしさであふれていること。甘酸っぱさと一緒にがんばって教えてくれたのに、あのとき、わたしは何も言えなかった。

うそのままにしたくなかった。向き合わないといけなかった。ここで“いつか”を叶えるためなら、いくらでも待っていられた。



会いたかった。

気になっていた。


ずっと、言いたかった。




「木本くん。あのとき、やさしくしてくれてありがとう」




文化祭が終わってから、足しげく東屋に通った。あの男の子が来てくれることを願って、来る日も来る日もひとりで、夕日が沈んでいくのを惜しんでいた。


高校に入学して、背の伸びたきみを見つけたときは、ものすごくびっくりしたんだよ。名前を知ったりすれ違ったりするだけで、一喜一憂してたこと、なんとなく照れくさいから秘密にしておくね。

話しかけようともしたけれど、わたしのことを憶えていないようだったし、きっかけを作るに作れなかった。クラスメイトだったらと何度考えたことか。1組と6組じゃあ、接点がなさすぎる。


偶然知り合って、偶然仲良くなって、偶然東屋に来たりしないかな。そんなふうに、去年のうちはそれなりに期待を描いていた。



あぁ、やっとだ。けっして短い時間じゃなかった。待って、待って、待って……待ち焦がれた瞬間が、今、本物になった。



やっと……きみに、言えた。




「傷つけてごめ」


「ん」


「……??」




ひとこと謝ろうとしたら、口にストローを差しこまれた。つい吸い上げてしまう。みずみずしい果実の後味に酔いしれる。100点のおいしさ。今はふたりだから、200点だね。


……ん? あれ?
これ……わたしのオレンジジュースじゃない。木本くんのだ。えっ、なんで? 木本くんが間違えた?


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