きみのひだまりになりたい
いろんな意味をこめて謝り直そうとする。が、眼力で制された。ほのかに微熱が点している。怖くはない。怒ってるわけでもなさそう。そこはかとなくほろ甘く感じた。
「おれ、たしかによくここに来るけど……ここっつうのは、東屋のことじゃなくてさ。試合んときとか、必勝祈願で神社によく来てたんだよ」
「……あ……神社のほう、だったんだ……。会えないわけだ……」
「あんときは、たまたま、東屋を見つけたんだ」
「偶然、か」
「ああ」
「すごいね。神さまのお導きかも」
ああ、そうかもな、と木本くんはやわく瞼を伏せた。わたしが口をつけたばかりのストローをそのまま自分の口に放りこむ。瓜二つのおいしさを感じ取っていた。
あのとき神さまにお祈りした効果かな。こんなに偶然が重なると、信仰心というのも生まれてきそうだ。今度、ふたりで、神社にお参りしに行きたいね。
「まひる。これ……好きか?」
「え?」
「きらいか?」
わたしの手元を木本くんは見つめる。手のひらサイズの、これ。主張の激しい、安っぽいデザイン。酸味の強い匂い。夏めいた気候にすっかり温められ、味の鮮度は消えかけている。
好きか、きらいか、と訊かれたら。聴いてくれるなら。
きらいだと、突っぱねたうそを、やり直したい。
これが、わたしの、本当の思いだよ。
「好き。一生好きだよ」
「体調は?」
「ばっちしです!」
「無理してねぇか?」
「してないよ!」
「これは、まひるのためになったか?」
「うん、なった。今でもなってるよ」
「大丈夫、なんだな?」
「大丈夫! わたしは、大丈夫だよ」
うそのない晴れやかな答えを、木本くんはひとつずつ満足げに噛みしめた。交差する指を撫でながら締めると、ゆるやかにほころんだ。