きみのひだまりになりたい



寝坊した。気づいたら目覚まし時計が止まっていた。就寝時間が遅くなったことが起因している。

昨晩は結月ちゃんと電話していた。ついつい恋バナが白熱し、日付をまたぐほど長引いてしまった。話が尽きず、今日の夕方にカフェで電話の続きをする約束もちゃっかりした。


今日が登校日じゃなかったら、倍以上電話していたかも。次に電話するときは、深夜じゃなく昼ごろからすることにしよう。夜更かししすぎるのはよくない。こういう目にあってしまう。とほほ。



寝ぼけ眼のまま家を出た。あくびをしながら走っていくと、校門前で二階堂先生が仁王立ちしていた。しまった、避けようがない。




「お、おはようございます、センセ……」


「田中。ぎりぎりだぞ」


「はい、すみません……」




寝坊しつつも、身だしなみはしっかり整えてきた。コーラルピンクのフード付きパーカーで、病み上がりの顔色を明るく見せる。ついでにヘアピンも、似た色彩のものをチョイスしてみた。


って、これじゃあ、また派手だって注意されちゃうよ。ああだこうだ言い合っているうちにチャイムが鳴って、遅刻決定。担任は二階堂先生だし、言い訳が通用しない。詰んだ。


今日に限っては、完全にわたしがわるい。ため息まじりに、受けて立つ気満々で身がまえる。しかし、いくら待っても、つばを飛ばされる気配がない。




「体調はどうだ」




長い間を持たせ、問われたのは、体調。
……え? 体調? 生活指導じゃなくて!?

珍しいこともあるものだ。おどろきすぎて、今度はわたしが長い間を持たせてしまった。先生は小難しい顔をして催促する。




「どうなんだ田中。良くなったのか」


「あ、は、はい! このとおり、元気になりました!」


「……そうか」



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