きみのひだまりになりたい



「まあ、いい」


「……へ?」


「夏休み中だからな。今日のところは特別に見逃してやろう」




イッツミラクル。

わーい! やったー! ラッキー! 遅刻をまぬがれた!


1学期中には考えられなかった奇跡を体感している。二階堂先生が超絶やさしい。どうしちゃったんだ。長期休暇は人の毒気を抜くのか。そういうものなのか。夏休みバンザイ。




「だが」


「っ!?」


「2学期からはまた厳しく指導していくからな。覚悟しておきなさい」




二階堂先生の横を過ぎると、悪寒が走った。ぶるりと身震いする。怖くて振り返れなかった。夏休みの延長はどこに申請を出せばいいんだろう。こちらも急募。



半ば駆け足で校舎に入った。教室に行くと、肌の焼けたクラスメイトがそろっていた。わたしが着席し、すべての席が埋まる。思い出と今後の遊び計画にあちこち盛り上がっていた。


うしろの席のひよりんは、念入りに日焼け止めクリームを塗りたくっていた。天パの髪は三つ編みとくるりんぱをたくみに駆使してまとめられ、露出された首根にも紫外線防止対策をおこたらない。あいさつがてら、UVカット素材のシャツを紹介された。ぬかりない。





「まひるん、来るの遅かったね。二階堂先生に捕まらなかった?」


「それがね、奇跡的におとがめなしだったの!」


「えええ!? あたしにはばっちり注意してきたくせに~!!」


「ひよりんは見逃されなかったの!?」


「……やっぱ、まひるんはお気になんだねえ。ちょっぴりショック」




お気に? わたしが? ……ないない。


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