きみのひだまりになりたい



「う~~ん……。よし。決めた!」


「何を?」


「これから先生のところに行って質問してくる!」




ひよりん、独り立ちのとき。意を決して起き上がり、声高らかに宣言した。わたしと小野寺くんはそろって拍手をする。



がんばり屋さんだなあ。夏休みでも気を抜かずに苦手意識と戦おうとするんだね。ふつうにやってのけているけれど、たぶん、それをふつうにできていることがすごいと思うんだ。


甘え上手なところも、ねばり強いところも、ひよりんのいいところ。がんばれって言う前から、とっくにがんばってる。だから力になりたいし、わたしもがんばろうって思えるんだよ。



小野寺くんも保護者の気分でひよりんをほめたたえた。栗色の前髪をわしゃわしゃとかき乱しながら、嬉々としてエールを送る。




「苦手克服できたらいいな」


「ちっがーう! 苦手を直すんじゃなくて、好きを増やすためにがんばってんの!」


「お、その考え方いいな。真似しよ」


「ふふん。あたしを見習って朝也もがんばってね! 大会、勝ち進んでるんでしょ?」


「おう! 次は準決勝だ!」




――大会を勝ち進んで、待ってっから。



木本くんへの、約束。一方的でも、小野寺くんはたしかに果たそうとしている。待っている、と、居場所を空けたまま。


約束のためだけではないだろうが、小野寺くんのひたむきさは成果につながっている。

元々浅黒かった肌は、いっそう黒く焼けていた。白シャツがパツパツに締まっている。それに、今朝からやけにテンションが高かった。ふわふわとしているときもあれば、急に熱量を高くして奮い立たせていた。


準決勝を目前にひかえ、どんどんパワーがみなぎっているのが、傍目に見ても伝わってくる。特に今日はひと味ちがう……気がする。久しぶりに会うからそう感じるだけなのか、それとも……。


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