きみのひだまりになりたい
ジュースを飲みながら屋上へ向かうと、ギィギィ、と重厚な扉が揺れていた。施錠されていないどころか、閉められてもいない。まるでわたしを手招いているよう。急ぎ足で扉の奥へ飛びこんだ。
うしろ髪が夏風に巻きこまれた。ちょっと痛いくらい吹きすさいでいる。一歩前を行く足が重たい。
しかし、空に白雲はなく、かたい地面に暗がりはない。笑みがもれた。いちばん高くまで昇った太陽が、進みたいところへ導いてくれる。容積の減った紙パックを片手に、手慣れた動作ではしごをのぼっていった。
給水塔の設置されたエリアに片足をつけると、まあるくなった背中を発見した。上履きのラインは、ていねいにみがかれた赤色。今日の先客は、寝そべっていない。
朱里くん、だよね……?
地面にへばりついて何をしているんだろう。何かを、書いてる? こんな風の強いところで?
「朱里くん。なーにしてるの?」
「うおっ!? ……まひるか。びっくりした」
「……朱里、くん……!?」
「……なに」
なに、って。えっ。だって。それ……!
正面に回り、かがんだら、絵に描いたようにおったまげた。朱里くんの、あの、ダークブラウンの髪がなくなっていたのだ。正確には、短髪がさらに短く刈られていた。少し長くなっていたとはいえ、「さっぱりしたね」程度で流せるレベルじゃない。
まじまじと凝視するわたしに、朱里くんは恥じらうように後頭部を掻いた。