きみのひだまりになりたい
どんな思いで言葉にしたのか、そのすべてをわたしは汲み取れはしない。だけどね、今の朱里くんが最高にいい表情をしていることは、教頭先生じゃなくてもわかっちゃうよ。
応援してる。朱里くんなら、なれるよ。どっちにしろ難儀な生き方でも、やっぱり好きで、大好きなら、きっと朱里くんらしくいられるよ。
「あと、もういっこ」
「え? まだ何かあるの?」
これまたびっくり。オレンジジュースを垂れ流したのどを、ごくりと鳴らす。下校していく生徒たちのざわめきが、急激に遠のいていった。
まひる。そう呼ぶ低い音だけは、鼓膜をくすぐる。まだ慣れないのはお互いさまなようで、どちらともなくぎこちなくなった。
「もう、おれのために、うそつこうとすんな」
「え。ええー……そ、それは……」
約束、できないな。二度はないと言い切れない。
うそをつきたくはないよ。だけどもしかしたら、また、うそをついたらやさしくなることもあるかもしれない。そうなったらわたし、ぜったい、うそをついてしまうよ。
いっこうにうなずけず、いっそ謝ろうとすると、朱里くんはため息を落とした。うんざりされたと思いこみ、わたしはただただうつむく。
あごをグイッと引き上げられた。必然的に目を合わせる。こうなることを見透かしていたように、黒い瞳は細められていた。
「どうしても必要なときは、俺がうそをつく」
心が震えた。ずるい。今、ほほえむなんて。