きみのひだまりになりたい
「木本くんはここでひとりで食べてるのかなって思って」
そしたら、ビンゴ。
案の定、きみは来た。
だから、わたしも、ここに来たの。
「ひとりよりふたりで食べたほうがおいしいよ」
わたしはひと口でミニトマトを食べた。みずみずしい甘さが口の中に満ちていく。状況に思考が追いついていない木本くんの隣で、それはそれはおいしそうにほっぺを落とした。
青い空の下。解放的なひなた。見渡せる町並み。お弁当箱とパンとジュース。これだけ条件がそろうと、ピクニックをしている気分になる。こうやって隣合って駄弁ってるだけで、食感や味覚がやさしくなっていく。
木本くんくんはどう?
そのアメリカンドッグ、いつもよりおいしく感じない?
「あんたこそ食べるヤツがいねぇんじゃねぇの」
刺々しく言ってすぐ、木本くんははっと口をつぐんだ。罪悪感のにじむ視線をさまよわせる。ゆらゆら揺れに揺れて、最終的にはポツンとたたずむ紙パックに着地した。
きれいな横顔が曇っていくのを見つめながら、ふ、と笑みを浮かべる。それに気づいて木本くんがこちらを一瞥した。
「いるよ? でも木本くんと食べたかったの」
至って平然としているわたしに、曇りが晴れていく。木本くんに向かってほほえめば、そっぽ向かれてしまった。