きみのひだまりになりたい
クラスメイトはわたしのことをわかってくれている。クラスは持ち上がりで、1,2年は名簿の入れ替えがない。必然的にわたしのクラス、2-6とは、かれこれ1年とちょっとの付き合いになる。
田中まひるが不良だといううわさを今朝まで知らなかったのは、クラスメイトがそういうレッテルを貼ってないからだ。
入学当初は、多少なりとも様子をうかがわれていた。
新しい環境に身を置いたらそうなるのはおかしいことじゃない。わたしもそうだった。距離感を探り合ったり、一から関係を作り上げていったりする過程で、人を、環境を、知っていく。そうしていくうちに自然と自分のことも伝わっていた。
クラスが打ち解けていくのに、そう時間はかからなかった。
だから、ほんと、びっくりだよ。わたしが不良だなんてさ。他クラスではそんなふうにうわさされてたんだね。
自分のクラスから一歩出たら、こんなにも世界が変わってくる。
この屋上だってそう。
未知の世界のひとつだった。
「……なんで、おれなんだ」
怪訝そうな目だけが、わたしのほうに向き直す。いまだにうなだれたままのアメリカンドッグから真っ赤な汗がしたたり落ちてしまいそう。
きっと木本くんにとって、わたしの存在が未知だった。
「おれに、会いたかった、って……な、なんだよ」
「何って、そのまんまの意味だけど」