きみのひだまりになりたい
梅雨に入ったら長くいられないな。
ずっと晴れならいいのにな。
わたしの気持ちまでたそがれてきた。
雨より晴れの日のほうが好き。
晴れの日の東屋が、好き。
赤い光がぽつぽつ浮かぶ東屋を、今日も今日とてひとりじめするのはうれしいような、さびしいような。
ベンチに腰かけた。スカートの触れた部分がやや沈む。右隣にカバンを置くと、痛い、とベンチが泣いた。
わたしは気にせずにカバンのチャックを開け、中身を探る。手のひらにしっくりくる物を見つけて取り出した。
『オレンジ100%』
木本くんのぶん。まだストローも刺されていない。新品も同然のオレンジジュース。木本くんの忘れ物。わざと置き忘れていった物。
これを屋上に放置することも、捨てることもできず、持ってきてしまった。
紙パックはぱんぱんでずっしりとしている。冷たい感触は感じない。とうにぬるくなった。それでも飲まれるのを待っている。
今日も、待ってる。
だけど、今日も、待つだけ。
左隣にオレンジジュースを置いた。ベンチに耐久性がないのを承知のうえで、ベンチに両足を乗せた。板の歪みが大きくなる。
ひざを抱え、ひざ小僧にあごをつける。見つめる先は、東屋の入り口。石畳の階段のほう。
夕日のまばゆさから逃げるように木々の影がゆらゆら泳いでいた。それだけ。石畳にそれ以上の影は落とされない。