きみのひだまりになりたい


◇◇



木本 朱里。

彼は、俗に言う、一匹狼だ。



見かける姿は、たいてい独り。話しかけても、ひとことふたこと返答して終わり。必要以上に関ろうとしない。だから友だちもいないし、作る気配すらない。単独行動を好んでいて、どこか冷めたような面持ちをしている。


はじめこそ先輩後輩問わず多くの女子がアプローチをかけていたが、最近ではすっかり“みんなの目の保養”という認識が浸透してしまった。


2年生に進級しても誰ともつるまずに孤高に過ごす彼を、ひそかに鑑賞して、

「クールだね」
「かっこいいね」

と、はしゃぐ女子の姿はさながらアイドルを応援するファンのよう。



無愛想な態度を、クールでかっこいい、と。

たしかに聞こえはいいけれど。



だけど。


ちがって見えるのは、わたしだけなのだろうか。





「まひるーんー」




慣れ親しんだチャイムとともに背中をどーんっと押された。上半身が前方にかたむく。みぞおちあたりに机が食い込み、痛みはないが若干苦しくなった。


みぞおちの感覚をさして気にもとめずに上半身を立て直しながら、こしを回してうしろを向く。右ひじをうしろの机につくと、右うでをうしろの席の住人にわしづかみにされた。




「まひるん! テストどうだった!?」




うしろの席の住人は、見るからに焦っていた。


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