きみのひだまりになりたい


右うでを包む両手は小さく、真っ白で、か弱そう。なのに、握力は人一倍強い。きれいに磨かれた丸っこい爪には、わずかに赤みが帯びている。

みぞおちより、右うでのほうが苦しい。そのうえブンブン振り回すものだから、神経への刺激が大きい。



荒ぶるな。落ち着きたまえ。




「ひよりん、まずはわたしの右うでを解放してあげて」


「あっ、ごめんごめん」




はっとして、小さな手が離される。空っぽになった手のひらの中に、指先がゆるやかにしまいこまれていく。右も左もぎゅうっと握りしめられると、「うぅ~~」とうなり声を上げた。


落ち着こうにも落ち着けないみたいだね。



先ほどのチャイムで午前の授業は終了。教室は一気ににぎやかになった。待ちに待った昼休みだというのに、空気がどんよりしているのはうしろの席だけ。




「テスト、むずかしくなかった!?」


「うーん、まあまあかな。ひっかけは多かったよね」


「え。まあまあ!? あれで!?」




どんどん落ち着きがなくなっている。ガーンという効果音がぴったりの表情になったと思ったら、今度はわかりやすくふてくされた。

握りこぶしを交互に振り、机の表面を殴る。ドンッドンッと太鼓を打ってるような音が大きく響いた。しかし昼休みモードの教室では、虫の音も同然。


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