きみのひだまりになりたい
つい先ほど実施された英語の小テスト。今回はリスニングではなくライティングだった。これまでの授業の復習のため、基礎的な文法問題、長文読解、英訳和訳が1枚のプリントにびっしり出題されていた。
簡単ではなかったと思う。長文読解と和訳の問題には数か所ひっかけがあった。この落とし穴にはまってほしいんだろうなあ、と教卓のほうを見やると、案の定先生がニヤニヤしていたっけ。
教室内にはわたしたち以外にも、小テストの話をしているクラスメイトが複数人いた。ほとんどがひっかけ問題の答え合わせをしている。先生のしたり顔が目に浮かぶ。
「さすが優等生はちがうね……」
「優等生て」
たしかに真面目ですけど。
テストの結果だけで言えば、成績もいいほうですけど。
二階堂先生が聞いたら鼻で笑われそう。本物の優等生だったら、ことあるたびに先生に捕まったり叱られたりしないんじゃなかろうか。
学力に秀でてるいだけなら優等生じゃない。言うことも聞いてくれる、素直ないい子ちゃんじゃないと務まらない。今のわたしには不適合な配役だ。
「ひよりんはだめだったの?」
うしろの席の住人も、落とし穴にはまった一人らしい。
名前は、天童 晴依。
あだ名は、ひよりん。
中学生に間違われることのある童顔は、動物でたとえると犬。犬種でいえば、ビジョン・フリーゼ。胸元まで伸びた明るい栗色の髪の毛が、ふわふわでくるくるなところも面影がある。
ちなみにヘアアレンジは毎日変えていて、今日は高めのツインテールだ。
本人いわく、ベビーフェイスと天然パーマがコンプレックスらしいけれど、わたしにはかわいらしい特徴であり圧倒的長所としか思えない。