きみのひだまりになりたい


この戦場のなか、アメリカンドッグを狩りに行ってやる! わたしのアメリカンドッグにかける思いは、そんじょそこらとはちがうんだ!


購買に来て、やる気スイッチがオンに切り替わった。メラメラと燃える。ひよりんがやや引いている気がしないでもないが、気にしないでおく。 戦闘時には集中力を欠くのは禁物だ。




「アメリカンドッグ好きなんだ?」


「ううん、特別好きではないよ」


「え? そんなぎらついてて?」




ほら、たまにあるでしょ? 好物じゃないけど定期的に食べたくなるもの。それがまさにアメリカンドッグなのです。


今わたしがとてつもなくぎらついて見えるなら、それは木本くん効果に加えて腹ペコだからだろう。このおなかの虫が早く早くと高カロリーを求めてる。




「昨日木本くんが食べてたから、わたしも食べたくなって」


「へぇ〜??」




ひよりんの頬肉がふやけていく。はーん、ふーん、ほーん、と、は行を駆使したあいづちをしながら、じりじり近づいてくる。細い両うでがわたしのうでに巻きついた。横目にうかがうと、シャツの「H」の文字にピントが合って、思わず目をそらした。


これから何を言おうとしているのか、エスパーじゃなくたってわかるよ。




「まひるんって〜、木本朱里のこと好きなの?」


「好きと言えば好き」


「ははっ! 素直ー!」




楽しそうな笑い声は、購買の活気のいい騒がしさに吸収されていく。わたしのおなかの虫もここでならたいして目立たない。


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