きみのひだまりになりたい


レジの横のケースはセルフで機能しているらしい。ケースの中身はすべて揚げ物。アメリカンドッグのほかには、から揚げとメンチカツが残っていた。どれもおいしそうで、おなかがぎゅるると鳴る。しかもすべて90円という破格の値段。安い。買った。


最後のひとつを厚紙に包むと、油がじわりとにじんだ。ずっしりとした重みからほんのり甘い香りがただよう。瀕死なりかけの胃袋になぐりかかってきてる。受けて立つまでもなく白旗を上げましょう。



今日はとことんカロリー高めのオンパレードでいく。そう決めたが早いか、目についたものを手に取っていた。


主食は、鶏の竜田揚げをはさんだライスバーガー。デザートは、ホイップクリームとカスタードクリームをふんだんに詰めこんだシュークリーム。


不健康なラインナップに満足感を得てしまう。


太ると思わなければ太らない。
今日の合言葉はこれで決まり。



ほくほく顔でレジの列の最後尾についた、そのときだった。




「朱里、てめぇ!」




怒号が廊下中を駆けめぐった。にぎわう空気感を一掃させた。あの購買がしんと静まる。


精神をまるごと持っていかれた。聞き覚えのある声だった。



だけど。

それよりも。


あの声は、たしかに。


――シュリ、って。



購買を埋めていた人の波が、怒号のしたほうへと引き寄せられていく。購買のすぐ横には、早くも人だかりができ始めていた。わたしの5人前に並んでいたひよりんも、とんかつのパック片手に列を抜け出した。


気づいたらわたしの足も向かっていた。


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