きみのひだまりになりたい
「追いかけなくていーの?」
この場にそぐわない、ふわふわなわたがしみたいな声音に、感傷まがいな情を吹き飛ばされた。隣ではひよりんが首をかしげていた。ちゃっかりレジを済ましたあとだった。いつの間に、とつっこんでしまいそうになる。
その問いかけは、わたしになのか、それとも。
坊主頭の男子が丸まっていた背中を正し、反射的にこちらを向いた。びっくり仰天!なんてテロップが見えるくらいオーバーリアクションを取るものだから、ひよりんがこらえきれずに噴き出してしまう。
「晴依、田中も……。い、いたのか」
「いたよーう。さっきまであたしたち以外にもたくさんいたよー」
「まじかよ……」
本当に、野次馬の存在には1ミリも気づいていなかったらしい。にぶいというか、集中しすぎていたというか。長所であり短所でもあるよね。
小野寺 朝也。
同じクラスで、ついでに言うとひよりんの隣の席。英語の授業中、たびたびひよりんを助けてあげている。
本人はこっそりのつもりだけれど、実は周知の事実というやつで。苦労性でおせっかいなイイヤツだって、クラスのみんな思ってる。
思っているからこそ、おどろいたんだ。あの小野寺くんが、周りが見えなくなるほど感情的になっているだなんて何ごとだ、って。
駆けつけて、すぐ、なっとくした。小野寺くんはやっぱり苦労性でおせっかいなイイヤツだった。木本くん用の入部届をわざわざ用意していたところなんか特にそう。