きみのひだまりになりたい
「木本朱里って昔からあんなスカしてたの?」
「全っ然。あいつは……」
「ああっ、待って!」
あわてて耳をふさごうとするも、うでの中には高カロリーな昼食たちがいて、せいぜい左耳を覆えるのみ。これじゃあ右耳が無防備なままだ。不可抗力で聞こえてしまう。
はたから見たら奇行とも取れる行動に、ひよりんと小野寺くんはそろってふしぎそうにする。結果的に話をさえぎれたから、おーるおっけーだ。
「……? まひるん何してるの?」
「わたし、木本くんの話は、本人から直接聴きたいの」
話してくれるか、わからないけれど。
いつ聴けるのか、わからないけれど。
伝えたいし、聴かせてほしいの。
ふふふ、とひよりんはのどを転がしたような笑みをこぼした。栗色のツインテールをおどらせながら、下からわたしの目をのぞきこむ。必然的に仕組まれた上目づかいは史上最高にかわいい。
「まひるんてば、ほーんと、真っ直ぐすぎるくらい真っ直ぐだねえ」
きっとわたしのコレも、長所でもあり、短所でもあるんだろう。
だけどひよりんにほめられたからいいの。どっちもならいいほうだと思っとく。わたしは今のわたしが史上最高に大好きで、友だちもそれを認めてくれているから、それでいいの。
それでも木本くんは、難儀だな、と吐き捨てるんだろう。そしたらわたしもまた、きみもでしょう、と苦笑してあげる。