きみのひだまりになりたい
壁を作ってもいいよ。どうせその壁は、目には見えない。いずれ壁をぶち壊したいけれど、壊さなくたって、手を伸ばせば届く距離にいる。届くなら、壁があろうとなかろうと問題ないよ。
「来ないとは言ってないよ」
いじわるく笑ってみせた。
これみよがしにアメリカンドッグを頬張る。サクッ、フワッ、ジュワッの三拍子。これはうまい。甘みのあるふっくらとした生地のやさしい食感のあとに、噛めば噛むほどジューシーさのあふれるソーセージをダイレクトに感じる。買って正解だった。
おいしい。おいしすぎる。
ふたりでいるから、おいしさを倍感じるの。
「迷惑だっつってんだよ」
「うん」
「うん、って……だからおれは、」
「振り回しちゃってる気はしてた。ごめんね」
「な……」
「でもやっぱり、木本くんのことが知りたい。仲良くなりたいって思っちゃうんだよ」
知らないでしょう。
わたしの心臓がバクバク鳴ってること。
自分勝手なことをして、木本くんがどんな思いをするのか、なんとなくわかっていた。また拒絶される気がしていた。屋上に来るのは緊張したし、実はちょこっと怖かった。
今は緊張してないし、怖くもないよ。どうしてだろうね。会って、しゃべったら、うれしい気持ちのほうが勝っちゃったのかも。心音が大きくて速いのはそのせいだね。