きみのひだまりになりたい
あーあ、また始まった。
こと細やかに記した日誌は、一度目を通して終わり。丁寧な文字を意識して書いたこと、今日の感想の欄をびっしり埋めたこと、気にも留めていない。
証拠にほら、日誌をパタリと閉じて、パソコンの隣に乱雑に置かれた。
窓から差し込む夕日が、日誌の表紙をぼやかせる。淡い赤色が表紙の真ん中に侵食し、なじんで、白くなる。心なしか嘆いているように見えた。
「いつになったら正しく制服を着てくれるんだ」
放課後の職員室。二階堂先生は椅子に座ったまま、厳しい目つきでわたしを見上げる。
苦味の強いコーヒーの香りが、鼻の奥を通り抜け、こめかみあたりを刺激した。ぐっと眉間をしかめれば、不服そうな顔のできあがり。
また反抗的だと思われていそう。
おそらく二階堂先生も、木本くんと同じタイプだ。顔は口ほどにものを言う。
「こういうのはそれなりにこなしておいて、どうして態度はそうなんだ」
はあ、とわざとらしいため息をつかれた。日誌の上で手を2回弾ませながら、やれやれと首を振る。
今回は呼び出されたのではない。日直の仕事を完遂したことを報告しに来たのだ。それがどうだ。日誌を提出して早々、恒例のお説教タイムが始まってしまった。
こういうの、って何。
そうなんだ、って何。
先生。わたし、それなりにこなしてないですよ。しっかり責任を持ってやり遂げたんです。