きみのひだまりになりたい



校則では、次のように明記されている。


髪色は黒か茶。ただし地毛の場合は髪色は問わない。ピアスや指輪などの派手な装飾品は禁止。学校指定のブレザー、スカートもしくはズボン、カバンを使用すること。ただし夏服の場合は、ブレザーではなく、学校指定のカーディガンもしくはベストを着用すること。



それを把握したうえで、さて、わたしはどうだろう。

髪色は、赤みが強いが、茶色に属する。アクセサリーはヘアピンのみ。色味は鮮やかだが、きんきらきんな派手さはない。学校指定のベスト、スカート、カバンを使っている。



ほーら、ごらんなさい。どこからどう見ても、この学校の生徒として申し分ない装いをしているではないか。

校則の範囲内で、シャツやらヘアアレンジやら、わたしらしい個性を上乗せしている。それだけのことなのだ。


まちがったことはしていないし、恥ずかしいと思ったこともない。




「先生は、わたしが恥ずかしいですか」


「田中、卑屈に取るのはやめなさい。わたしは態度を改めろと……」


「自分らしく、自分に胸を張って過ごすことを恥だと、そうお思いですか」




二階堂先生は押し黙った。聞き耳を立てていた他の職員も、つられて口をチャックする。職員室は静寂に包まれた。コーヒーの湯気がうすまっていく。



教師は絶対的な存在ではないし、大人が必ずしもえらいわけでもない。それを指摘するのが、子どもであり生徒であっても、おかしなことではないだろう。


正解と不正解に分けられない問題があり、むりくり二分化してしまうのは実にもったいない。どれも正解、どれも真面目でいいじゃないか。生き方は無限大だ。



そう意見することを反抗的な態度だと捉えるのならば、わたしは、はい、そうですねと答えるほかあるまい。


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