きみのひだまりになりたい
「自分にうそをついて、自分をねじ曲げてしまうことのほうが、よっぽど不真面目なことだと、わたしは思っています」
わたしは、わたしに、うそをつきたくない。
わたしを、きらいになりたくない。
「それでは、日誌は届けたので。さようなら」
応酬が激化する前に、ふんぎりをつけ挨拶をした。わたしの切り替えの早さにぽかんとする先生をよそに、すたこらさっさと職員室を出て行く。
パタリ、と閉めた戸に、後頭部をすり寄せる。
うーん……強く言いすぎた? いやいや、なあなあになるよりましだ。主張すべきことは言い切った。これでまた「田中まひるは不良だ」といううわさに尾ひれがついたら……。
「ま、そうなったらそうなったで、なんとかなる!」
今までだって、なんとかなってきた。というか、うわさ自体を知らずにのんきに過ごしてこられた。きっとこれからも、そう。意外と杞憂で終わるものだ。
予定外のお説教はあれど、何はともあれ、日直の仕事はコンプリートした。ようやっと放課後だ。
帰って小説の続きを読まなくちゃ。昨夜読みふけったのは、物語の前半部分。ヒロインの女の子が好きな人に失恋して、甘い恋がひび割れてしまったところまで。後半はどうなるんだろう。好きな人と結ばれるのか、はたまた幼なじみとくっつくのか。気になるなあ。
職員室の前に置いておいたカバンを肩にかけ、昇降口を目指す。職員室の前を通り過ぎると、扉がスライドされた。気にせずに回廊を歩く。
「田中さん。田中まひるさん」
「……?」