きみのひだまりになりたい
「な、何度も言うように、その髪と服装をどうにかしなさい」
指摘する点が、態度から髪と服に変わった。今度はわたしの身なりが反抗的だと言いたいらしい。
はあ……またか。
今年度新しく赴任してきた二階堂先生は、生活指導という大役を任せられた。そのためか、こうして毎度毎度口うるさく戒めてくる。熱を持った指導は、もはや恒例化している。
さっき、ほんの5,6分前、校舎に入るときにも聞いた。ていうか、昨日もおとといも、先週も、なんなら今年度の始業式から耳にタコができるくらい聞いてるよ。
そんなに聞いていて、直さないわたしもわたしだけど。今度は謝らない。謝る気がないし、謝る理由がない。
「どこがだめなんですか」
「派手な恰好はやめなさいと言っているだろう」
赤みの強い茶色い髪。左耳の上に留めた、カラーピンふたつ。ふんわり巻いたミディアムヘアーの上半分を、おだんごにして結んである。
制服は少しだけ着崩してる。
衣替え期間といってもまだ肌寒いときもあるから、お気に入りの白いパーカーを着て。その上には、学校指定のブレザーを羽織っている。
これのどこがだめ?
「校則には反してませんよね?」
髪は茶色だし、ブレザーだって羽織ってる。
だめなところなんてなくない?
「校則に明記されていなくとも、身だしなみには気をつけなさい。他の生徒が真似をしたらどうする」
「いいんじゃないですか? 髪とか服とか、バリエーションが増えたら毎日楽しいだろうし」
「いいわけないだろう! 田中、お前はもう少し真面目に考えろ」