きみのひだまりになりたい
教頭は、生徒だけでなく、同じ先生という立場もおもんばかる人なんだ。
職員室で言い合いになっていたのを気にかけ、二階堂先生のフォローをしに来たといったところだろう。フォローの仕方は優しく、わたしの考えを否定はしない。カウンセラーとして頼られるのもなっとくだ。
「二階堂先生は、田中さんを心配して……」
「はい、わかっています」
「! ……そうですか」
二階堂先生は頭でっかちで頑固だし、時代錯誤な価値観を大事に持ったままだし、厳しくてねちっこくて、ついでに説教が長い。
こうして特徴を並べ立てると、けっこうめんどうくさいタイプだなあ。あ、でも、わたしも二階堂先生のことはきらいじゃないよ。
特別好意的には思っていないけれど、一応尊敬はしている。
注意を聞かずに、言いたいことを言って逃げるわたしを、二階堂先生はあきらめずに毎日毎日追いかけてくる。
もういいやと放棄しても、義務教育を終えた高校生が相手なのだから、とりわけ咎められることもないだろうに。
現に、昨年度はそうだった。生活指導や担任の先生は一度や二度の注意をして、おしまい。そんなもんか、とわたしもなっとくしていた。
二階堂先生は、ちがう。
生活指導担当だから。担任だから。
それだけではないことは、ちゃんとわかっている。
わかっているんだ。