きみのひだまりになりたい
昇降口は森閑としていた。有名なブランドで買ったお気に入りのスニーカーに履き替え、とんとんと靴先を地面に当てる。校舎を出ると夕日に照らされ、丸出しのうでにほどよい熱を感じた。
東屋に行き、読みかけの小説に没頭し、きりがいいところで家路につく。放課後の予定はこれで決まり。時間は押したが、予定に変更はない。脳内シミュレーションもばっちりだ。
校門を通り、グラウンドに沿うように道なりに歩いていく。グラウンドでは、部活に所属する生徒が精を出していた。
奥のほうは野球部が占拠している。コーチがバッド片手にボールを繰り出し、部員は果敢にキャッチしていく。小野寺くんは顔を泥だらけにしていた。
そういえば、明日、土曜日に練習試合があるって言ってたっけ。
だからか、グラウンドで練習しているどの部活よりも、野球部は一段と気合いが入っている。がんばれ、と心の中でエールを送った。
……あれ?
わたしの他にも、様子を見守っていた影があった。数メートル先で立ち止まり、フェンス越しにグラウンド側を見入っていた。
見覚えのありすぎる姿だ。
あの、ダークブラウンの短髪。
あの、猫っぽい顔立ち。
まちがいなく、木本くんだ。