きみのひだまりになりたい



渋々重いこしを上げ、屋上を出た。とぼとぼと階段を下りていく足取りは、これまた重い。

木本くんが来たとき用に買っておいた『オレンジ100%』から、やけくそ気味にストローを抜いた。4杯目だ。



放置されているとわかっていて、何もしないわたしではない。せっかく関わりを持てたんだ。ここで終わらせたくない。待っていても意味がないのなら行動あるのみ。


明日の昼休みは、2-1に行ってみよう。木本くんに自分から会いに行く。わたしはあきらめがわるいんだよ。知っているでしょう?



そこで、もし、木本くんが木本らしく居たら。


しょうがない。
特別にあの約束をなかったことにしてもいいよ。

いいんだよ。




「あっ、田中まひるだ」


「はい?」




ふと名前を呼ばれた。しかもフルネーム。

つられて疑問符付きで返事をしてしまった。廊下の数メートル先で女子ふたりが立ち止まっていた。見覚えのない人たちだ。


左のセミロングの子が「ちょっと……!」と、ひじで右のボブの子をつつく。「あ」と、ボブの子は口を手で覆った。心なしか顔色がわるい。


あのふたりも例のうわさを聞いたのだろう。わたしも有名になったものだ。不名誉ではあるけれど。



どうしたものか……。

返事をしちゃったし、フレンドリーにあいさつでもしとく? それとも素通りするのが正しいの? わからぬ。こういうとき、気まずい空気感の切り抜け方に困り果てて、もっと気まずくなっちゃうんだよなあ。早く教室に戻って、ひよりんにいやされたい。


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