きみのひだまりになりたい


こしを90度に折り曲げる。呆然としてる先生に「ではっ」と敬礼をする。半分以上も中身の残っている紙パックを片手に、先生の来た方向とは逆方向に走り出した。


パタパタと上履きの音を鳴らす。3秒の間を置いて「た、田中! 待て!」と制止をかけられたけれど、無視だ無視。先生もわたしも言いたいことは言ったんだ。今日はこれで見逃してほしい。これ以上先生にかまってあげられる暇はない。




「廊下は走るな!!」




典型的なその注意を聞いたのは、角を曲がってからだった。走るのをやめた。早歩きにシフトチェンジ。スタスタと2年生の教室を次から次へと素通りしていく。


また先生に捕まりたくない。二度あることは三度あるって言うし、追われても平気なように今のうちに距離を取らないと。



階段を駆けのぼった。最上階まで行くと、足腰にどっと疲労感が押し寄せる。下りていったほうがよかったかな、と気づいても、あとの祭り。


いいや。来ちゃったのはしかたない。いい運動になったと思うことにしよう。先生もここまでは来ないだろうし。



ぐっと伸びをしてオレンジジュースを補給した。絶え間なくストローを吸い続ける。飲みすぎて残量が減っていった。


屋上に続く踊り場。
「立ち入り禁止」と注意書きされた重厚な扉。


すきまから透明な光がもれている。その光に誘われるようにドアノブに手を伸ばす。試しに回してみると、ギィ、と軋む音がした。



あ、開く。


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