きみのひだまりになりたい



「……ねね、聞いちゃえば?」

「えっ」

「田中まひるなら知ってそうじゃん」

「ええ……」

「デキてるってうわさだし」

「……え、本気?」

「まじまじ」




なにやらコソコソと話を始めたふたりの女子。わたしのほうをチラチラと見ては、百面相している。

なんだ、なんだ。気になるな。わたしの名前が聞こえてきたぞ。またうわさ話か? わたしは不良じゃないよ?


おっと。あっちから近づいてきた。


ボブの子に押されながら、セミロングの子がおそるおそるといった様子でうかがってくる。緊張がこちらにまで伝わってきた。ごくんっとオレンジジュースを味わうひまなく流しこんだ。




「あ、あのう……」


「は、はい……?」



「えっと……その……」

「ほら。聞いちゃえって」

「もう。わかってるって!」



「わ、わたしに何か……?」


「あ、あのですね、初対面でこんなことを聞くのはどうかと思うんですが……木本朱里くんと仲がいいんですよね?」




これはなんて答えればいいんだろう。うわさみたく「デキているのか」と訊かれたら、迷わず「NO」と首を振ったけれど、この訊き方は絶妙にむずかしい。


仲……いい、のか?

わたしは今放置されているし、心を開いてくれていると思ったら閉ざされたようだし。他の人よりは距離は、近い、とは思う。仲良くなくは、ない。仲良しだと断言もできない。


わたしと木本くんって、今、どういう関係なんだろう。


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