きみのひだまりになりたい
目を泳がせながら沈黙していると、女子ふたりはそれを肯定と受け取ったらしく、「やっぱり」「ほんとだったね」と嬉々としてアイコンタクトをした。
「あたしたち、木本くんと同じクラスで、仲良くなりたいって思ってはいるんですが、なかなか……こう……近づきにくいといいますか」
「美男子のクールなオーラに、みんなやられちゃってて。女子も男子も圧倒されちゃってるんですよ。1年以上経っても、遠巻きにして見とれてるだけでいっぱいいっぱいで。イケメンは3日で飽きるって、あれ、うそですようそ」
「どうしたら木本くんと仲良くなれるかが、クラスみんなの悩みなんです。なんとか話しかけても避けられてしまいますし……。よければ何かアドバイスをいただけたらいいな、と……お、思いまして……」
同学年相手に尊敬語を徹底していることには、この際触れないでおこう。
そんなことよりも、今はよろこびのほうが勝っている。恐縮しきっている女子ふたりに、わたしはこっそり胸をなでおろした。
木本くんは、一匹狼ぶっている。
壁を作って、自己完結して、うそを重ねて。
独りが好きなふりをする。
いつしか“みんなの目の保養”になっていた。クールでかっこいいともてはやされ、安易に近づく人はいなくなった。
そんな彼をなりふりかまわず追いかけ回す物好きは、今ではわたしと小野寺くんくらい――かと思っていた。
でも、いた。ここにいたよ。
“みんなの目の保養”で終わらせていない。あきらめていない。追いかけたくてくすぶっている人が、こんなにいた。