きみのひだまりになりたい
あんなとこ、といっても、一年の教室からちょっと離れた階段のところ。購買が近くにあって、あんなとこ呼ばわりするような辺鄙な地じゃない。
昼休み終盤だけあって、人気がほどんど無いに等しかったけれど、ちょっと話しかけられて、ちょっと相談に乗っちゃうなんてことはよくありそうでしょ。現にあり得たんだからしょうがないよね、うん。
仲良し大作戦の詳細は、あえて教えないでおく。女子ふたりの悩み、引いては2-1の課題だもの。仲良くしてやってと告げ口するのは、なんとなくお門違いな気がするし、そう言ったとて効果があるとは思えない。木本くん自身で確かめてみてね。
「何だよそれ……」
「何だよって、何だよもう」
「全然大丈夫じゃねぇか」
「うん。大丈夫だよ。最初からそう言ってるじゃん」
意味わかんなそうにされましても。これが事実ですし。この状況のほうがよっぽど意味わかんないよ。
はあああ、と木本くんは息を吐きながら、脱力したようにしゃがみこんだ。依然としてわたしの手首に巻きついた、ごつごつとした大きな手。力は弱まったのに、いっこうに離れない。
飲みかけのオレンジジュースは、待ちぼうけを食らっている。
「木本くんは何を心配してたの」
「俺は、てっきり……」
「……?」
「また、おれのせいで……やな思いさせちまったのかと……」
わたしが、木本くんのことで。
やな思いをする、って。
それって。
――『朱里のファンとかに何かされたりしねぇの?』
もしかして。