きみのひだまりになりたい
わたしより小さくなった木本くんをひと目見れば、憶測が確信に変わる。わからないことがわかっても、ちっとも晴れやかな気分になれない。心音に重みが増した気がした。
柔らかそうな髪の真ん中に、つむじがひとつ。下へ下へ沈んでいる。そこに待ったをかけた。甘やかな拘束を受けていない左の手を、つむじの上に乗せる。消沈するのちょっと待った。
ひざを曲げ、木本くんと目線を同じにする。きれいな黒い瞳にうっすら濁りがほのめいていて、あいまいに苦笑するほかなかった。
「いじめ」
「っ、」
「られてるって、思ったんだ?」
「…………」
木本くんが心配していたのは。
小野寺くんが気にしていたのは。
過去に、あったんだ。やな思いをした『何か』が。
だから。
――『あれはおまえのせいじゃねぇって、何度言やわかんだ』
――『……俺のせいで、やな思いとか、するかもしれねぇじゃん』
きっと、それこそが
木本くんがうそをつく理由だった。
大丈夫じゃなくなるのがいやで。同じ思いをしたくないから、神経をとがらせて案じていた。また、がないように、独りでいた。逃げていた。そうやって保っていた。
屋上で、わたしと会うまでは。
「それで、わたしを連れ去ったんだ。助けようとしてくれたんだね」
「…………」
「でもどうして? 最近わたしのこと避けてたよね?」
「……それも、だ」
「え?」
「うわさを、聞いたから」