きみのひだまりになりたい
わたしが不良だってやつじゃないほうの、あの、例の。とっくに木本くんの耳にも入っちゃってたか。
うわさってつくづく厄介だ。いつ、どこからか勝手に拡散され、中身をそこら中で足し引きされ、知らぬ間に収束している。どれだけ横暴に振り回しているのか、その影響力を知りもしないで。
「またおれのせいで、傷つけられるんじゃねぇかって……。だから……その前に、距離を置こうと思った」
放置されていたわけじゃなかったんだ。木本くんなりに守ろうとしてくれていた。
「……なに笑ってんだよ」
じろりと黒い瞳だけをよこして、ぶすっとしてる。原因は、明々白々。状況と不釣り合いな、わたしのにやけ具合。
うん、ごめんね。
不本意に地雷を踏んで、本気でへこんでるのは重々わかってる。その地雷が一朝一夕で片付けられるものではないことも、被害こうむった古傷がいまだに痛むことも。ちゃんと届いてるよ。
わたしだって、不謹慎だからにやけるな、にやけるなってがんばって抑えた。でも、むりだった。自制の甲斐なく、へらりとだらしなく破顔してしまった。
うれしかったの。
木本くんにとって、わたしは守ろうと思える存在になってたんだって、そう思ったら胸が熱くなった。まるで大切にされているようで、くすぐったくて、いとおしくって。
どうしようもなく自惚れた。