きみのひだまりになりたい


施錠されていなかった。立ち入りを禁じているわりに不用心じゃないか。と、思いつつも、好奇心がうずく。


真面目ちゃんでも、禁止されたら気になってしまうのがヒトの性というもの。なんてヘタクソな言い訳を脳内に並べ立て、ドアノブをつかむ手を力ませた。


ゆっくり扉を押した。ギギギ、と音が激しくなる。

すきまが広がる。光がまばゆくなっていく。思わず目を細めた。




「お……おおっ!」




すぐに光に慣れた視界に、開けた景色が鮮明に映る。かたい灰色の地面。緑色のフェンスの奥には、さらに濃い緑に覆われた小山とスケールモデルのような住宅街が展望できる。


一歩、屋上に踏み入れた。


梅雨入りをひかえた風は相変わらず生ぬるいけれど、圧がないぶん先ほどよりは断然心地いい。スカートをひらりとなびかせ、天を仰ぐ。窓から覗いたときよりずっと空が近く感じる。澄み切った群青に吸い込まれてしまいそう。



いい。いいね。
なんとも言えない解放感。

屋上ってこんな感じなんだ。お気に入り登録したいくらい落ち着く。



校舎の構造上、屋上には、今わたしが入ってきた出入口のついた四角い出っ張りがある。その上には給水タンクが設置されてある。扉の横に備えてあるはしごからのぼることができる。


あの上からは景色はどんなふうに見えるんだろう。


ショートホームルームまではもう少し時間がある。のぼってみようかな。ちょっと気になるし。うん、のぼってみよう。


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