きみのひだまりになりたい
8月1日。
今夜の降水確率、60%。
厚い雲が星々のきらめきを覆い隠している。月明かりすらも雲の奥にしまいこまれ、きれいなはずの夜空はなんとも殺風景で、物足りない。
その代わりに、といっては何だが、いつもは人っ子ひとりいない神社は大盛況だ。灯された雪洞、立ち並ぶ屋台、ごった返す浴衣姿。午後7時を過ぎ、いっそう活気にあふれた。
雨が降るかも、と気に病んでいる人は、おそらくいない。
わたしもそうだ。今、気にしているのは、
「もうすぐかな……」
待ち人がいつ来るか。その一点に尽きる。
約束の時間まで、あと2分を切った。鳥居の前でどんちゃん騒ぎを聞きながら、右へ左へ首を振り、暗い道を見渡す。まだ姿は見当たらない。
ちょっとそわそわしてる。ちょっと、というか、かなり。待ち人が必ず来ると知っていて待つのって、形容しがたい緊張感がある。ここに着いてからというもの心臓が落ち着かない。
思い返せば、家で準備しているときからそわそわしていた。タンスの肥やしと化していた浴衣の出番がようやく訪れたと意気込み、帯を締めた。
降水確率を知ったのは、かごバッグに荷物を詰めたあとだった。折りたたみ傘は入りそうになかった。
浴衣はひと目惚れして買ったもの。アイボリーとクリームをほどよく溶けこませたような生地に、梅の花を咲かせたレトロモダンなデザイン。夕焼けを撮ったような帯は、蝶結びにして形を整えた。
赤茶の髪はポニーテールにまとめ、そこにさらに浴衣の色味に合わせた革紐を巻きつけた。