きみのひだまりになりたい


ここまでがんばっておしゃれしてきたのは、せっかくの夏祭りだから。ふたりにとって、すてきな思い出になるように。今夜は星が見えないから、自分の心に願う。




「あっ」


「……よ」


「久しぶり、木本くん」




PM 7:30。

時間ぴったりに来た。来てくれた。


Tシャツとジーパンというラフなスタイルで参上した木本くんに、内心安堵しながら微笑みかける。木本くんも浴衣を着てくるなんて期待は、はじめからしていない。会えただけで十分満足だ。




「……来なかったらどうしようかと思ってた」


「そりゃ来るだろ」


「だって木本くん、気分屋だし……」


「約束、したからな」




小指にじんわりと熱が帯びていく。

あのときの思いつきの提案が、こうして実現するとは思わなかった。実は感動してる。強引でも約束を取りつけてよかった。


夏休みに入り、約2週間。木本くんは身長と髪の毛が少し伸びていた。そういうちょっとした変化を見つけては、夏休み中に会えたよろこびを噛みしめる。




「今日はたのしも! ね!」


「……ああ」


「まずは何食べる? 焼きそば? たこ焼き? ケバブもいいよね」


「やっぱ食いもんかよ」



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