きみのひだまりになりたい


屋台のアメリカンドッグは、こってりしていた。糖度高めな生地は油をたっぷり吸っていて、厚みも重みもある。これはこれでおいしい。今日の合言葉も、太ると思わなければ太らない、でいこう。




「そういや食ってたっけ」


「食べてたよ。忘れもしない、あのときの味……」


「あんときはほかのことに意識向いてたし」


「ほかって?」




首をかしげたら、軽く睨まれ、おでこを小突かれた。あー……、と今度はわたしが微妙なあいづちを打つはめになる。

そうか、そうか、わたしのことか。あのときは押しかけ女房みたいだったもんね。いや、それは今もか?




「購買でアメリカンドッグを買おうとしたときだよ。木本くんと小野寺くんが知り合いだって知ったのは」




なつかしいなあ。そんなに前のことじゃないのに、遠い昔のように感じるのはどうしてだろうね。


今でも鼓膜の裏に、苦しそうな叫び声が焼きついたまま。くしゃくしゃになった入部届は、きれいに四角く折りたたまれ、小野寺くんの手元に残っている。いつでも応えられるように。



――大会を勝ち進んで、待ってっから。


あの伝言を伝えても、木本くんは何も言わなかった。だからわたしも、それ以上は言及しなかった。


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