きみのひだまりになりたい
「もうすぐ大会が始まるね」
「…………」
「まだ練習してるのかな」
「……さすがに帰ってるだろ」
「かな? ……夏休みもがんばってるよね」
「…………」
「がんばってほしいね」
「……、おう」
夏が、始まった。
野球部は来週に初戦があるらしく、夏休みも練習漬けの日々を送っている。学校の近くを通りかかるたび、野球部のかけ声が地響きのごとくこだまし、圧倒されていた。
待っている、と。
宣言したあの言葉を、うそにしない。そんな気迫をひしひしと感じ、言霊になればいいと本気で思った。
「おや、田中さんと木本くんではないですか」
アメリカンドッグをぺろりと平らげ、次の目当てをしぼりこんでいると、通りすがった白いテントの下で、教頭がパイプ椅子に座っていた。わたしたちに気づき、緑茶の入った湯飲みをことりと置く。
長テーブルは、和紙で作られた円状の明かりで飾られていた。その近くには、学校名と出店の一覧表が寝そべっていた。
「お久しぶりですね。お元気ですか?」
「え、あ……き、教頭先生お久しぶりです! 元気です!」
「そうですかそうですか。それはよかったです。夏祭りはどうですか? 楽しんでいますか?」
「はい、それはもう、すごく」
「そうですかそうですか。それは何よりです。木本くんはどうですか?」
「……まあ、はい」
「そうですか」