きみのひだまりになりたい


こんなところで教頭と会うとはびっくりだ。夏休み中は先生たちと対面することはないと決めつけていたから、よけいに唐突な邂逅にどきりとした。木本くんも面食らっている。

次に何を食べるか忘れちゃった。




「教頭先生はどうしてここに?」


「見回りですよ。このお祭りにはうちの生徒もたくさん遊びに来ますからね。生徒たちを護るために、近隣の学校と協力してパトロールしているんです」


「そ、それは、えっと……あ、ありがとうございます」


「ふふ。二階堂先生も来ていますよ」


「えっ」


「今はちょうど見回り中ですが」




ばったり会っちゃったらどうしよう……。いやではないんだけど、こんなところでもお小言をもらいたくないし……。うーむ、悩ましい……。

複雑な心境が顔にも出ていたのか、教頭はクスクスとのどを転がす。




「おふたりとも、羽目を外しすぎぬよう気をつけながら、夏祭りを思う存分楽しんでいってくださいね。このあと花火も上がる予定なので、そちらもぜひ」


「は、はい! たくさん食べて、たくさん遊びます!」


「……っす」


「あちらにあった焼きそばがとてもおいしかったですよ」


「本当ですか!? 木本くん聞いた!? おいしいんだって!」


「……きーた」


「これは買いに行かなきゃだね」


「はいはい」




屋台の焼きそばは、やはり外せない。いい情報をゲットした。わくわくと期待をふくらませるわたしに、木本くんはやれやれと肩をすくめた。


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