きみのひだまりになりたい



「あっちでしゃべってくれば? 焼きそばは俺が買っておいてやるよ」


「え! でも……」


「ここで立ち止まってたら通行のじゃまになんだろ」




しっしっ、と木本くんは追い払う仕草をする。気を遣ってくれているのだろう。ここはお言葉に甘えることにする。焼きそばは木本くんに任せ、2番目まで差し迫っていた列を離れた。



屋台の並ぶ通りから、木製のベンチが設置された隅のほうに寄ると、明かりが一気にうすまった。お月さまやお星さまに頼ることもできない。夜が更けていくのを肌で感じる。


虫の音、祭りばやしのかたわらで、ぴちゃんっと水滴を飛ばす音。透明なビニールに囲われた手狭な湖で、気持ちよさそうに金魚は尾をあおいでいた。




「まひるちゃん。久々だね」


「……うん。ほんと、卒業以来」




結月ちゃんは中学の同級生で、3年間同じクラスだった。同級生の中でいちばん、一緒にいる時間が長かった。そのぶん思い出もたくさんあって、卒業アルバムの写真はわたしひとりよりも結月と写っているもののほうが断然多い。


今でも大事で、大好きな、友だち。


よく笑ったし、ケンカもした。ふたりして泣いたときもあったね。ひよりんみたくずっと仲良しこよしではなかったけれど、あのときケンカをしてよかったって思ってるよ。ただ、あんな思いをするのは、もう二度とごめんだ。




「元気?」


「うん、元気だよ。結月ちゃんは?」


「あたしも。元気に高校生やってるよ。恋だってしてるんだよ」


「そっか……。結月ちゃんが、恋……。青春してるね」


「あはは。うん、青春してる」



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