きみのひだまりになりたい



「その色も……いいね。鮮やかで、あったかくて……まひるちゃんに合ってる」


「……ありがとう。結月ちゃんも似合ってるよ。結月ちゃんっぽい」


「えへへ。でしょ?」




結月ちゃんは自慢げにくるりとひるがえし、パステルピンクの映えた袖口をたなびかせる。レースのついた帯もひらひらふわふわでいい感じ。あのショーウィンドウで観た浴衣と似ていて、ぼんやりノスタルジーを馳せた。

ぴちゃんっと水しぶきを上げ、金魚も舞いおどる。




「あ、そろそろ行かなくちゃ」




一回転する直前、結月ちゃんは人通りの多い屋台側を一瞥した。一緒に来た友だち(仮)を見かけたのか、思い出したように呟いた。白レースの足袋にくるまるつま先を、雪洞のつるされたほうに向けた。


そろそろ焼きそばの屋台で木本くんの順番が回ってきたころ合いだ。もうすぐ花火も上がる。ちょうどいい時間だ。

もっとしゃべりたかった気持ちはあるが、これ以上結月ちゃんを独り占めしては、結月ちゃんの友だち(仮)に妬かれかねない。せっかくの夏祭りという舞台。わたしはわたし、彼女は彼女で満喫するべきだ。




「まひるちゃん、また今度遊ぼうね」


「うん! もちろん!」


「約束だよ。次は、ぜったい!」




こくこくうなずけば、結月ちゃんは喜色満面で大きくうでを振った。最後の最後までかわいらしくて、中学生に戻った気分になる。

あっという間にパステルピンクが人の波にまぎれていく。ぴちゃんっ、と澄みきった粒を揺らめかせ、不覚にも金魚を酔わせた。


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