きみのひだまりになりたい
「……、おれ、」
すっかり体温を奪われたわたしの手を、木本くんは手の甲側からきつく握りしめた。太い指を雑に絡ませる。力の加減を忘れ、皮膚を圧迫していく。木本くんの頬からずり落ちていき、わたしの片うでがだらんと下がった。
「ひと、を…………大切、だった、人を……傷つけた」
――パァン! パァン……!!
まるで後頭部を銃で撃ちつけられたかのように、木本くんの首が傾いた。深紅に色づいた火薬の残像が、屋根を貫通し、地面にぽたぽたと落ちていく。一見、本物の血かと錯覚し、息をのんだ。
手から痛みが引いた。骨がミシミシ鳴るほど必死にすがりついていた木本くんの手が、花火が消えていくにつれて戦々恐々とほどけていく。
すべて闇に飲みこまれてしまうより早く、木本くんの手をつなぎとめた。手のひらを合わせ、指と指のすき間を埋め、ぎゅっと力をこめる。
届いてるよ。そばにいるよ。わたしが、いるよ。
「お、れ……っ、おれ……!」
「うん」
「中2んとき、初めて……人を、好きになった」
「うん」
「新川、っていう、同学年の女子だった。クラスはちがったけど、よく目に留まって……気になった。告白したけど、好きなやつがいるって言われて……。悔しかったし、つらかったけど……仕方ねぇな、って。初恋は叶わねぇってよく言うし」
はは、と木本くんは自嘲混じりの一笑をもらす。すぐさま酸素を求め、大胸筋を上下させる。
初恋なんて甘酸っぱい響きほど、この場に似つかわしくないものはない。証拠にほら、空気がどんどん苦々しくなっていく。さしずめ、その甘みは猛毒なのだ。口にするだけで脈をにぶらせる。