きみのひだまりになりたい
「だけど、おれが、好きになったから。告っちまったから……っ」
「木本、くん……?」
「……おれの、せいで……」
どこにでもある思春期の片思いで終われたら、どれだけよかっただろう。
「に、新川が、……いじめられた」
火花が燃え尽きる。一瞬にして、鮮烈に、跡形もなく。
この苦しみもいっそのこと灰にしてくれないだろうか。
「おれが知ったのは、いじめが起こったあとで、おれは何もできなかった」
「……うん」
「いじめてたやつは、おれと同じ委員会の女子で、新川と仲がよかった。はず、だった。でも、そいつが、おれのこと……好き、で……それで……」
わたしの手の甲に、しだいに木本くんは指の腹を這わせた。さっきほどの強さはない。弱くとも、たしかに、触れ合っていた。ふたつの冷えた温度が溶け合い、ぬるくなっていく。
真夏日なのにちっとも暑くない。むしろ寒いくらいだ。木本くんも同じであろうが、白んだ首筋には、つ、と汗が流れていた。
「仕方ない、で、片づけちゃいけなかった。いじめのこと知って、おれ、新川に謝りに行ったんだ。……そしたら、大丈夫だって、言われた」
「それは……」
「……ああ。うそ、だった。友だちみんないなくなって、クラスでは孤立してた」
「……そう、」
「新川はおれのせいでやな思いして、大切なものぜんぶ失ったのに、おれは……大好きな野球をして、部活では部長になって、仲間にも恵まれて――おれ、何してんだろう、って思った。おればっか好きなことして、楽しんでさ。なんでおれだけ楽に生きてんだろう、最低だ、って」