きみのひだまりになりたい


だから……。だから、だったんだね。

やさしくもないうそをつくのも、誰のやさしさにも応えないのも。自分がいちばん自分を許せないんだ。好きなことをしていても罪悪感に苛まれ、自分自身がやな思いを募らせる。



――『また、おれのせいで……やな思いさせちまったのかと……』



また、やな思いをさせまいと、するなら自分ひとりで背負いこむ覚悟で、好きな人の負った傷と同じような形、同じような深さのそれを烙印していた。


部活を辞めた。友だちを避けた。壁を作り上げた。笑わなくなった。

うしろ指を指されただろう。傷をえぐられただろう。それでも「好き」から逃げなければ、「きらい」になってしまいかねなかった。



木本くんも、ほんと、難儀な生き方をしてるね。


木本くんは好きになっただけ。木本くんがわるいんじゃないのに。その想いまで“悪”にしたら、“いい思い出”も“やな思い出”になっちゃうよ。

報われるものも、報われない。傷が化膿して、治せなくなる。ずっと痛いまんまだよ。




「逃げたのは、その、新川さん? がいたから?」




木本くんはさらに首を深く沈めた。さっき鳥居の近くにいた男女のうちの片方が脳裏をよぎる。


木本くんとつながった手をぐっと力ませた。そのまま力強くうでを引く。勢いに負けて引き寄せられるがまま、木本くんはベンチから腰を浮かせた。

木本くんの顔が上がった。目ん玉が飛び出そうなくらいかっ開かれ、間の抜けた顔になっている。



わたしは強気に笑った。




「行こう」


「……は?」


「彼女に、会いに」



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