きみのひだまりになりたい
屋台のある通りに帰ってきた。木本くんが先に静止した。道のど真ん中で、変わらず花火に目もくれず、鳥居のほうを見据える。
鳥居の前には、若い男女がたたずんでいた。私服姿の男子と、浴衣姿の女子。切なさをせいいっぱいたたえながら花火の最期を見守っていた。
音が止む。光が消える。花が枯れる。辺りは闇に浸かる。
わたしたちもきっと、ずっと、このままではいられない。
「……に、っ、……にい、かわ」
天に囚われていた彼女の瞳が、静かにすべり降りてくる。木本くんに焦点を合わせると、数度まばたきをし、うろたえた。
木本くんは深呼吸をした。吸いこめば吸いこむほど握力の数値が上昇する。なんとか平静を装いながら、すくんだ足を踏み出した。その半歩うしろで、わたしは太いうでに寄り添った。
「木本くん? 木本くんだよね……?」
「朱里じゃん。すげぇ久々だな」
「……あ、ああ、だな。久しぶり、遥陽、……に、新川」
新川さんといる、遥陽と呼ばれた男子とも知り合いだったらしい。彼も中学の同級生なら、木本くんと新川さんの事情も知っているんだろう。だからこんなにも、同級生との久方ぶりの再会のムードとはほど遠い空気が流れている。
全員が戸惑い、不安がりながらうかがっていた。あいさつ後の開口を探り、気まずさを肥大している。
木本くんの唇は淡く紫がかり、小刻みに震えていた。なんて言えばいいのかわからず、言葉を思うように出せないのだ。沈黙が重たくのしかかる。声をかけたことを後悔しているかもしれない。