闇に溺れた天使にキスを。
プロローグ
放課後、君と秘密の時間。
「ほら、俺から目を逸らさない」
いつもは真面目な彼だけれど、私とふたりきりの時だけ。
メガネを外し、妖艶に笑って私を壁まで追い詰める。
もう、逃げられないように。
完全なる包囲網。
「俺だけを見ていて」
いつもは閉めてあるシャツのボタンを外し、鎖骨の下から見え隠れする和彫り。
危険な色気を纏う彼。
「絶対に、いなくならない……?」
時折、すごく不安になる。
彼が突然消えてしまうんじゃないかって。
「未央をおいて消えるなんてありえない。
逃げるなら、未央も一緒についてきて」
安心させるように、私の耳元で甘く囁く彼に───
もう、私は溺れているんだ。