闇に溺れた天使にキスを。
「恥ずかしがられたら逆に諦めきれないんだよね」
「神田くん、何言って…」
「もっと恥ずかしいことだってできるんだよ」
「……っ」
もっと、恥ずかしいこと。
その言葉で以前の保健室での出来事を思い出してしまう。
忘れられない記憶。
今の神田くんなら、本当にまた同じようなことをしてくる恐れがあったため。
ここは素直に聞くことにした。
少し緊張で手が震えながら、もう一度だし巻き卵を彼のほうへ差し出す。
恥ずかしい私とは違い、彼は平然とそれを口に運んだ。
それだけなのに胸がドキドキして。
本当、神田くんのせいだ。
「本当だ、これすごく美味しいね」
「うん…大好きなんだ」
まだ少し、ドキドキする感情が収まらない中。
なるべく意識しないよう心がけて、平静を装う。