闇に溺れた天使にキスを。



「白野さんの大好きなもの、共有できて嬉しいなぁ」


そう言って本当に嬉しそうに笑うものだから、気をつけないと勘違いしてしまいそうになる。

神田くんが、私のことを“友達”として見てくれているんじゃないかって。


そんなこと、あるはずないのに。
優しいからひとりの私を受け入れてくれただけ。

それしか考えられない。


「じゃあ、今度は俺の番」
「え…」
「どれが食べたい?」


神田くんの開けたお弁当箱を差し出され、戸惑ってしまう。

どれが食べたいって…神田くんのものを私が食べるの?
そんなの申し訳ない。


「わ、私は大丈夫です…!」

「俺だけがもらうのは悪いから。
それとも好きなもの、なかった?」


見る感じ、彼は折れてくれそうな気がしないため、諦めてお弁当箱を覗く。

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