闇に溺れた天使にキスを。



「そろそろ食べないと時間なくなっちゃうね」
「あっ、ほんとだ…」


スマホの時計を確認すると、残り30分を切っていた。

このままでは時間だけが過ぎていくと思い、ようやくご飯を食べ始める。


ふたりきりの静かな空間でご飯を食べるのは、少し違和感があったけれど。

穏やかな時間だった。


正直、安らぎのような時間。

顔を上げれば神田くんがいて、さらには向かい合って座っている。


こんなこと、誰にも言えない。
秘密の時間のようだ。


「ピアスは、いつあけたの?」

特に沈黙が苦だったわけじゃない。
むしろ、心地のいい空気だと思っていた。


そんな中で、ふと彼の耳たぶについてあるシルバーのピアスに目がいったから───

何気なく口を開き、聞いてみただけ。

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